湯ヶ野の郷愁風景

静岡県河津町【温泉町】 地図 
町並度 4 非俗化度 6 −「伊豆の踊子」の舞台として知られる素朴な温泉街−
   
 

 河津の市街地より伊豆半島内陸部を縦貫する国道414号を3kmほど、湯ヶ野地区に達する。河津川の谷間が狭まる位置にあり、ここから先は天城越えの険路となる。
 湯ヶ野温泉は特に川端康成「伊豆の踊子」の舞台となったことにより知られている。温泉場としての歴史について詳しく紹介されている書き物やサイトは乏しく、多くは同作に絡めた解説に終始しており今一つ不明ではある。しかしその舞台となったという旅館「福田家」は明治12年創業と云うのだからそれ以前から湯どころとして賑わっていたのだろう。
 農業のほかにこれといった産業はなく、農間には天城山より雑木を切り出し炭焼などを行う程度で、村民の生活は豊かなものではなかったようだ。また天城街道は港町下田と東海道の宿場町三島を結ぶ伊豆の幹線路であり、天城峠下の梨本村に人馬を出役させたり、三島宿の助郷の費用を負担するなど街道交通の維持にも携わっていた。
 温泉街は河津川沿いに連なっている。但し国道を通過するだけではその存在に気付くことはないだろう。谷沿いから離れた高い所を通っているからだ。しかし谷間に降りてその温泉街を見渡しても大型の旅館があるわけでも看板を掲げた宿があるわけでもない。伊豆の踊子の舞台と名乗る割には、いかにも地味な温泉地である。そんな中で「福田家」が橋向うに老舗旅館らしい佇まいを見せ、共同浴場やその他の宿の姿もあった。温泉街を歩くのは地元の人と温泉を訪れた客のみに限定されることもあって、非常に静かな落着いた温泉場といった印象だった。
   
谷沿いに展開する湯ヶ野温泉街 


 
 旅館・福田家  


 
 


 



 
   

訪問日:2022.04.11 TOP 町並INDEX