寺尾・東倉沢の郷愁風景

静岡県由比町<街道集落> 地図 
 
町並度 6 非俗化度 6 −富士の絶景の峠下に広がる素朴な街道集落−





寺尾の町並

薩※峠から富士を望む


 東海道の清水と由比の間は山塊が海岸に迫り、東海道本線、国道1号線そして東名高速道路が一束になってこの難所を乗り切っている。その状況は徒歩行であった旧東海道の時代から変わりなく、斜面を巻いて薩※(サッタ)峠を越えるあたりは、海岸を見下ろし富士山を遠景にして、非常に素晴しい眺めを堪能することもできる。かつて江戸に向う旅人は、やっとここまで来たことを実感するだろうし、又その光景に旅の疲れも一時癒されていたことに違いない。
 その「絶景」が見られる峠道と由比宿との間、東倉沢地区と寺尾地区には街道集落の濃厚な古い町並が見られる。この付近の東海道が海岸を結ばず峠路を辿っていたから潰されずそのまま残ったのだろう。特に東倉沢地区では平入りの町家風建築が所狭しと連続している。ここは由比宿の加宿の一部ではあったが、中心からは最も外れた位置にあるため街路幅は狭く、それだけに家並は迫り来るような見応えを感じる。
 間の宿としての賑わいは峠を控えてかなりのものだったのだろう。峠の入口に「望嶽亭」と呼ばれる建物が残る。これは御立場、茶店として東海道が現役の頃より偉人や文人墨客を中心にここで一時の休息を取ったのだという。屋号藤屋、通称坂口屋という。老婦人に内部を案内いただいたが、立派な蔵座敷があるなど外観以上に内部の豪華さに驚いた。今は完全には見えないが当時は部屋から富士の姿が見え、望嶽亭という名もそこから来たのだという。
 付近の街道を歩くと素朴さを濃く感じる。地元の方がよく眼につき、世間話をしていたりしている傍らを東海道巡りらしい徒歩客が通り過ぎていった。

※=土へんに垂(この字を含む文章をアップロードするとサイト表示に不具合が生じるための措置です。ご了承ください)
 








東倉沢の町並

訪問日:2009.01.03 TOP 町並INDEX