湯の峰温泉の郷愁風景

和歌山県本宮町<温泉町> 地図  <田辺市>
町並度 4 非俗化度 4 
−熊野本宮参拝時の湯垢離を行ったとされる歴史の古い温泉街−




谷間に展開する湯の峰温泉街 川べりからも温泉が湧き出している


 湯の峰温泉は県の南東部、新宮市へ流れ下り太平洋にそそぐ熊野川の中流域に位置し、紀伊半島の中央と言ってよい内陸部であるが標高は100m余りと比較的低い。
 温泉街は熊野川支流の谷間に展開し、屈指の温泉地として日帰り客を含め訪れる客が絶えない。
 わが国最古の温泉とも呼ばれる
(道後温泉など諸説あり)ほど歴史が古く、成務天皇(4世紀中頃の第13代天皇)の頃の発見と云われる。山裏には熊野本宮大社があり、熊野詣が温泉の発展と密接な関係にあった。藤原宗忠が記した『中右記』では、天仁2(1109)年11月の記に「未刻行向湯峰、坂行程十余町也、於湯屋浴之」とあり、温泉地として整備されていた事がうかがえる。鎌倉の頃になると本宮参拝前にここで湯垢離(聖地での禊ぎ)が行われた記録があり、江戸期にはここに宿泊して参拝することが一般化した。川沿いにあるつぼ湯は湯垢離を行った浴場の一つとされ、温泉街の名物となっている。
 源泉は90℃前後という非常に高温の温泉で、川岸からも熱い温泉が湧き出しており、茹で卵などが作れるように整備されたところもある。その付近や共同浴場付近を中心に観光客で賑わっていた。ここの民宿に泊ったが夜は打って変わって静かさが支配しており、神聖な土地のように思えた。それはこの温泉街には旅館が比較的少ないからだろう。大型の宿泊施設はなく、中小規模の旅館や民宿のみであり、熊野本宮大社を控えた地らしい風情が保たれている。湯も肌触りがよくわずかな濁りとに硫黄臭のするいかにも温泉らしいものであった。 
 
 
 



 
上流側には民宿が点在している 
 



 
 かつての湯垢離の場とされるつぼ湯  
訪問日:2024.09.15・16 TOP 町並INDEX