湯の鶴の郷愁風景

熊本県水俣市【温泉街】 地図
町並度 4 非俗化度 7 −山間の谷あいに開ける素朴な温泉街−





 


 水俣の市街地から南東に10km余り、鹿児島県との境近くに小さな温泉街が展開している。湯出川という小さな流れに沿った谷間で、ここに至る県道も細い峠道であり、通過点にもなり難いところにある。
 歴史は古く、一説によると源平合戦の頃負傷した鶴が湯浴みをしているのを平家の落人が発見したことが始まりともいわれている。長らくは温泉街は形成せず、周囲の農民が農閑期に湯治目的で訪れる零細な温泉場であった。
 現在も温泉地としては地味なイメージであり、川沿いに旅館群が展開しているだけで歓楽色は全くなく、地元の商店が数軒見られるだけである。水俣市内の海岸沿いにある湯の児温泉とならんで、それぞれ海の温泉・山の温泉として売り出しているというが、訪ねるのは地元の人がほとんどのようである。しかしそのことで昭和の温泉場といった雰囲気が保たれ、古い町並的な風情を感じることができる。
 特徴的なのは川沿いの風景といえよう。建物を川にせり出してコンクリート柱等で支保する構造が多く、狭い谷間に旅館を建てるのに苦労したさまが伺える。湯の鶴温泉に関しては、表の通りではなくこの崖家造り風の構造が町並の印象の多くを占めるといってよい。また各温泉は街路の対岸に旅館を構えているため、それぞれ専用の橋を持っている。その橋の姿もレトロさに満ちているものが多く、町並景観に貢献している。
 時間はなく温泉に入浴することは出来なかったが、泉質的にはなかなか良いものがあるようで、隠れた人気の温泉場であるらしい。









訪問日:2017.06.10 TOP 町並INDEX