土居の郷愁風景

高知県安芸市<城下町> 地図
 
町並度 6 非俗化度 5 −土用竹の生垣に囲まれた小路が象徴的な城下町−

 

 

 土居廓中の町並
 
 
 安芸市は県域南東部、太平洋に面する町で高知市からは国道55号で45分ほどである。市域には表情の異なる二つの町並があり、港町・在郷商業町として発展した海岸沿いの地区と、ここで紹介する内陸部の城下町・武家町地区である。
 関ヶ原の役後に土佐に入った山内一豊は土佐一帯の5ヶ所に家老や重臣を配置したが、そのひとつがこの安芸で、家老に五藤氏が指名された。二つの町並はいずれも同氏により計画されたものであるが、城下町と町人町が2kmほど離れているのは珍しく、実際城下町・武家町を訪ねても田園が広がっているだけである。
 安芸城は土居とも呼ばれ、その南側の廓内に配された武家屋敷群をまとめて土居廓中と呼ばれることが多いが、それは安芸城が廃された明治以降になってからという。
 廓中地区に入るとにわかに様相が異なり、土用竹と呼ばれる小ぶりな竹の生垣が連続しており、それも細やかに手入れされていて端正な味わいを醸している。板塀、土蔵、武家屋敷、耕作地が交互に現れ、一つの大きな庭園ともいえるような雰囲気を持っている。廓(くるわ=城や砦など一定の地域を限り、その周囲と区別するために設けた囲い)の言葉通り、周辺とは画然と町並景観が変わるのも面白い。一般公開されている野村家は、五藤氏に仕えた上級の家臣であり、街路に面した門以外にも塀重門」という一回り小さな門を構えている。また、家臣が身を隠し、訪問者を確かめる構造となっている居間等、生々しい武家屋敷の用心体制が見受けられる。
 廓から外れても見所はあり、まず明治時代より時を刻みつづける時計台は「野良時計」として国道沿いでも案内標識となるなどこの町のシンボルとなっている。またそこから南に少し歩くと、水路と土蔵、長屋門などが見られる風情ある町並風景が残っていた。これらも土居地区の探訪を印象付けるものである。
 
 
 

 

  土居廓中の町並
 

 

 

 

  野良時計(左上)その南側にも古い町並が展開している
   

2022.09再訪問時撮影   旧ページ

訪問日:2002.04.28
2022.09.25再訪問
TOP 町並INDEX