有田の郷愁風景

佐賀県有田町<産業町> 地図
 
町並度 7 非俗化度 3  −世界に名高い有田焼の故郷−


有田の町並 妻入り形式を中心とした商家建築 一部に洋風の外観のものや三階建てのものも見られる


 世界にその名を知られる陶磁器の産地・有田の町は、春の連休の時期には陶器市が行われファンが大勢なだれ込むといったイメージもあるが、訪れると意外に観光客に目を向けた色が少ないのに気付く。中心街は小さな小売店が連なり、その渋いいでたちも好ましい。歴史のある産業町らしい町並は上有田駅付近より約1kmにわたり続いており、この界隈が重要伝統的建造物群保存地区となっている。
 我が国の陶磁器の発祥地の歴史は400年にも及ぶ。上有田駅の北方に泉山磁石場があり、これは鍋島藩が慶長の役からの朝鮮撤退時、当地から多くの陶工を連れ帰った、その一人が発見したものである。現在でも有田の命綱である。
 ここは江戸時代皿山代官所が置かれ、藩の厳しい管理下にあった。かつて高札のあったといわれる辻、現在も札の辻と呼ばれる周辺がかつての町の中心であり、盛んに市が立っていたという。この周辺には洋風の建築もよく見られ、明治以後海外への輸出も始まり文化の交流する機会の多かったことを物語っている。和風の伝統的な商家は、ずしりとした妻入りの二階建が多く、白漆喰まれに鼠漆喰で、二階には角型の窓が並ぶ、九州で比較的よく見られる様式が多い。
 ここはまた裏小路にも味わいがある。ドンバイと呼ばれる廃棄された窯の煉瓦、失敗して商品にならなかった皿などが土塀に使われ、その向うには煉瓦の煙突が見える。ドンバイ塀の通りと呼ばれる小道は、表通りとはまた異なった風情が感じられる。
 焼物に興味があれば、もっと町の魅力を感じることができるだろうにと思いながらの探訪だ。

 












裏路地にはドンバイ塀やレンガ塀の見られる風景が展開する

訪問日:2002.07.20
2018.01.02再取材
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2018.01再訪問時撮影の画像

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