筑後吉井の郷愁風景

福岡県吉井町<宿場町・商業町> 地図 <うきは市>
 町並度 7 非俗化度 4  −日田街道沿いの「白壁の町」−






旧豊後街道(日田街道)沿いの町並


 吉井は白壁土蔵の町として知られる。ここは江戸期より3度の大火に襲われた。そのため住民の防火意識が段階的に高まり、火に強い漆喰塗り込めを多用するようになった。現在見られる町並はそれ以後、明治初期頃のものが多い。関西や中四国などに多い厨子2階虫籠窓ではなく本2階がほとんどであり、妻入りの多い家並は九州の古い町並の典型的な町並景観をなしている。
 町は天領であった日田市を結ぶ豊後街道(日田街道)の宿場町に由来し、江戸後期からは筑後地方東部の地理的、経済的な中心をなし、在郷商業町としても発展した。
 町並は旧豊後街道を踏襲する国道210号線の沿線、及びその北側の小路地区に残る。特徴的なのは2車線の国道の両端に重厚な土蔵造りの家並が連なって残ることで、当時よりこのような広い街路であったことを裏付けている。天領に通じる重要な宿場であったからこそであろう。西口では旧街道の形状のまま桝型状に折れ曲る箇所があり、往時のままであることを示している。
妻入りの形を取る商家は連続性があり、見応えのある町並景観が展開する。
 白壁通りと呼ばれる国道より北側の地区は車も少なく落着いた散策ができる。この地区は災除(さいのき)川、南新川の2本の川をはじめ水路も多く、水のある土蔵風景は吉井を代表するものとなっている。この地域では現在でも河童伝説が生きており、川沿いを歩くと河童にまつわる置物、石像などをよく見かける。
 
 この地区では見学できる伝統的建物もある。南新川沿いにある鏡田屋敷と呼ばれる建物は唯一の屋敷型の建造物で入母屋造りの母屋、離れ、土蔵に囲まれ庭園があり、屋敷のそばの水路から引き入れた池がある。幕末に建てられ、郡役所等にも使われていた建物である。
 さらに、銀行経営などを行っていた旧松田家住宅が「居蔵の館」として公開される。妻入りの外観に、二階部は矩形の鉄扉という九州北部らしい商家の形で、内部は大きな神棚を中心とした吹抜けの構造が圧巻である。いずれの施設も無料で公開され、地元の方のガイドを受ける事も出来る。
 




旧豊後街道より北側(通称白壁通り)の町並
 一帯は重要伝統的建造物群保存地区となっており観光客の姿も眼につくが、それらに迎合したような土産物屋や景観を損ねる施設はなく、町並としてのバランスは取れている。

旧松田家住宅(居蔵の館)

訪問日:2002.07.21
2016.07.18再取材
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※2016年再訪時の画像

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