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| 入江の奥に開ける江崎の町 六角堂が印象的 | |
山口県日本海側の最も東に位置する江崎の町。港は深く切れ込んだ湾の奥にあり、外海の影響を受けることはなく穏やかである。漁港はさらにU字型に入組んだ入江に船溜りを設け、ぐるりと集落が囲んでいる。日本海岸とは思えない穏やかな漁村風景である。 入江の外に架かる橋からは集落全体を見渡すことが出来、漁港の西北端に眼を引く六角堂がある。応永の頃（1400年頃）漁師の網にかかった仏像が、以前海で行方不明となった長者の娘の化身とされ、それを祀ったのが始まりといわれ、名の通り六角形の形をした屋根を持つ独特の外観で県の文化財となっている。 江崎浦は近隣の商港として賑わい、また周辺の阿武地域の物資集散地として機能し、さらに東の石見地方からも米穀や紙製品が移入され、海路積出されていった。津和野藩の御米紙蔵も設置されており、石見とのつながりも深かった。また、西廻り航路もここを寄港地とし、廻船を誘致するために春と秋には芝居も許可されていたという。 一方で漁業も古くから盛んで、鯛や鯖・鯵・鰤等が多く水揚され、浜で直接売買されるものや、石見津和野を経て遠く安芸国まで行商された。塩物や干物に加工されたものは瀬戸内沿岸の地域に広く交易の範囲を広げていた。鱶（フカ）の鰭も特産で、これは俵に詰められ長崎に積送るのを常としていた。 町並も地形に従いU字型に連なる。潮風に晒された板張りの漁村らしい家屋もあるが、入江の西岸側を中心に漆喰に頑丈に固められた商家型の旧家も幾つか見られる。二階に木製の手摺が残る家々も見られ、それらはかつて旅館か置屋だったのだろうか。いずれにしても鄙びた漁村というよりは港町として商業も栄えたらしい色が町のあちこちに濃厚に感じられた。屋根が石見地方と共通の赤瓦で占められているのも、風情を増している。 六角堂をシンボルとして、船溜りを抱くようなこの町の風景は美しく、町並共々末永く守られてほしいものである。 |
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| 入江に沿う町並 一部には商家を思わせる建物も見られる | |