山本の郷愁風景

滋賀県五個荘町<商家の邸宅群> 地図 <東近江市>
 町並度 6 非俗化度 8 −土蔵が町並景観の主役 富を象徴する風景−






豪商宅の土蔵が多くみられる山本の町並

 

 五個荘町は湖東地方の中部、田園と丘陵が交錯し農村集落が散在する。町内には近江商人屋敷と呼ばれる豪商の旧家が多く残ることが特徴的で、それらが伝統的な町並を形成している。
 近江国では八幡(現近江八幡市)や日野などで商家が発達し、五個荘はやや遅れを取ったがそれでも既に18世紀前半の享保年間には京都をはじめ各地に店を出すものが現れ、やがて江戸へ出店する商人も多く現れた。
 行商も盛んに行われ、木綿や繰綿・生糸・麻その他多くの商品を手に、上方はもちろんのこと西日本一帯から東北、蝦夷地にいたるまで天秤棒を担いで全国を渡り歩いた。
 明治以降も発展は続き、繊維関係の67軒の商人のうち13軒が県外に店舗を持っていたとの記録もある。
 ここで紹介する山本地区は重要伝統的建造物保存地区となっている金堂地区から南に1km余り、田園と丘陵の境目に立地する小さな集落だ。ほとんど注目されることもないがそれにしては勿体ないほどの珠玉の風景が展開している。その主役は各商家の重厚な土蔵群である。五個荘で見られるような屋敷型の旧家では敷地の奥に配されるのが一般的であるが、ここでは街路に面して連続した風景も多くみられ、蔵並ともいえる風景を持っている。板を腰に回した外観が多くの土蔵で共通しており、一方で白漆喰や鼠漆喰、また土蔵に似つかわしくないほどの立派な屋根をもつものもあり、歩いていて飽きさせない。
 保存の動きはないようだが、古い町並としてその価値は十分あるところで、今後に注目したいところだ。
  
 





※文章内容は一部「五個荘町金堂」と共通です。


訪問日:2011.05.22 TOP 町並INDEX