今立(粟田部)の郷愁風景

福井県今立町<在郷町> 地図 <越前市>
 
町並度 5 非俗化度 8 −和紙の里を控えた在郷商業町−




町家建築が面的な広がりを見せる粟田部地区の町並 左は岡太神社門前街


 今立町は和紙の里である。美濃・土佐などと並び、越前和紙の名は全国的に知られており、当町はその生産の中心地である。この地で和紙が生産されたことで、記録に残る最古のものは8世紀にも遡る。平安期には政府指導のもとこの越前の地に紙を増産するよう命じ、平野から山間部に差しかかる地形で紙生産に欠かせない良質の水が豊富であったこともあり、そのままこの今立に産業として根付いたようである。
 ここでは旧市街中心に位置する粟田部地区の町並を紹介する。東に接する五箇と呼ばれる地区が純粋な製紙業集落であるのに対し、粟田部地区は周辺の山間部などからの物資の集う在郷町であり、酒造業・薬種商などの商家と鍛冶屋・大工等の職人が多く住まい、22ヶ町を数えた。東組と西組に分けられ、それぞれに庄屋が置かれ統治されていた。
 北西側の山麓一帯には寺社が集められ、それは現在も引継がれておりひとつの町としての結構がしっかりしている印象を受ける。
 国道417号から脇道に入ると面的に古い町並が展開している。町家の標準的なスタイルは平入りで2階の両妻部に防火用の袖壁を備えている。それらは近畿地方を中心に見られるものとは異なり、梁組が剥き出しになっており先端部が金具で補強された北陸独特の外観を示していた。前回訪ねた時、妻入りの建物の前面に平入り町家の軒先を押付けたような、「かぐら建て」と呼ばれる建て方の旧家も見られたが、今回は確認できなかった。 
 前回から10年以上隔てての再訪であるから、多少変化更新があるのは仕方なかろう。むしろ連続性が良く保たれているといえる。この中心地区では町並を意識した色がうかがえないが、その価値のある町並であり、このまま徐々に面影が失われるのは惜しい。




 




※文章の一部は「今立五箇の郷愁風景」と共通
※全て2018.08再訪問時撮影

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訪問日:2003.11.03
2018.08.13再取材
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