角館の郷愁風景

秋田県角館町<城下町> 地図 <仙北市>
 
町並度 7 非俗化度 3
 −町中に自然を強く感じる北国の城下町−


 県のほぼ中央、仙北平野北部に位置する角館は黒を基調とした家並が特徴である。人工的な武家屋敷地でありながら、春の枝垂桜に代表されるように四季折々の風情を醸し出し、訪れる人を魅了している。
角館を代表する武家屋敷街の風景




 江戸中期の領主芦名義勝に続き、佐竹北家が城下町として築いたもので、現在も碁盤の目状の整然とした町割を残している。記録によれば武家屋敷80戸、商家350戸を従える大規模なもので、佐竹氏の支藩内では最大の規模を誇っていた。その当時の町割がほぼ完全な形で現在に残されており、重要伝統的建造物群保存地区に指定されている。



 町並は自然を強く感じさせる独特の雰囲気を持っていて、町の真骨頂の東勝楽丁では黒板壁に囲われた荘厳な雰囲気の武家屋敷の庭内に針葉樹、落葉樹をはじめさまざまな木々が配され、それが江戸の昔から守られたこともあり通りからも原生林の中を歩くような清々しさが漂う。黒板塀の直線的ではあるがしかし機械的な感じのしない趣がさらにそうさせているのだろう。
 そのこともありこの町並では四季が濃厚に感じられる。春の枝垂桜、夏の緑の木陰、秋の紅葉、冬の雪景色と移ろって行く。中でも冬は、黒と白の色彩の失われた、ツートーンの世界となり非常に独特で襟を正さしめるものとなる。
 武家屋敷は何軒か公開されており、中でも青柳家は、その規模、意匠の端部にも行き届いた武家の威厳を感じさせるのに充分なものである。庭には雪国らしい屋根付きの井戸があり、離れの「ハイカラ館」には、機械文明が始まった頃の貴重な生活用具、玩具、嗜好品、什器等が展示され興味深い。
 観光客の集中する地区から南に歩を進めると、嘘のように商店や住宅の並ぶ市街地が展開している。これは町の計画上内町と称された武家地の外側に火除けと称する空地を経て、その外側を商人町とした名残が明確に残っているのである。商人町から発生した火災が城下の最前線である武家地に類焼することを危惧して計画されたものであり、その町域区分は現在でも厳然とわかれている。しかしその旧商人地にも土蔵など伝統的な建物が散在し、観光地域とは異なった町の風情を感じさせてくれる。








田町武家屋敷街 観光客の訪れないこの一角も樹木に覆われた武家街が残されていた

訪問日:1991.10.29
(2012.08.14再取材)
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