第13号 (15.10.21発行)

神辺宿・歴史まつり
      
関連ページ 神辺の郷愁風景


神辺本陣


 神辺は中世には城下町、江戸時代山陽道の宿駅として発達したところだ。
今でも宿場町としての面影が残っていて、古い町並を残すこの町で特に貴重なのが、大名行列時に藩主の宿泊施設にあてられていた本陣が、現在もそのままの姿で残っていることだ。
 山陽道・東海道筋には本陣がそのままの形で残っている例は非常に少ない。
 申込制で見学も可能だが、この町自体は何度も訪ねているにもかかわらず、この本陣を見学したことはなかった。
 この「神辺宿・歴史まつり」の期間中は、本陣の内部が自由に見学できるとのことで、このたび訪ねることにした。




会期中公開される本陣の内部
 

 現存する本陣の建物は1746(延享3)年に建てられ、外部には塀が張り巡らされ母屋を囲んで中庭、そして複数の土蔵がある。正面から入ると広い座敷、奥にやや狭い部屋があり、その境に眼につく木製欄間の意匠も美しい。しかし私が建物内部を見て回ったところ、痛みが目立つ箇所も少なからず眼についた。
 会期中はボランティアのガイドが案内役をされていた。今後修繕して常時公開の予定はないのかと質問すると、国の重文ではなく県の文化財なので、維持費に十分な予算が付かないのだと。その価値のある建物だけに少々残念である。
 当日、本陣の敷地内ではさまざまな催しが行われていた。座敷内での歴史講演会、母屋裏の敷地では昼食や飲み物の提供、フラダンスなどのミニ公演、土蔵を利用した出店。本陣敷地内に入るときに1人300円を徴収し、パンフレットを渡されそれ以後はフリーに出入りできるようになっている。料金は本陣の維持費用に使われているとのことで、私もささやかながら役に立たせてもらったというところか。








本陣の敷地内では講演会・ミニ店舗などさまざまな催しが



本陣付近の旧山陽道で行われた「軽トラ市」
本陣前の旧山陽道は歩行者天国となり、「軽トラ市」が開かれ地元客を中心に賑わいを見せていた。一部の旧家では、「町家見学」という看板とともに一部が公開されていた。その1軒では、表からは近代的な店舗でありながら、裏手に土蔵など宿場町時代の名残が残る姿があり、普通の町並探訪では見ることが出来ない姿も見学することが出来た。




「町家見学」の文字に誘われたが玄関付近のみ?普通に生活されているお宅なので仕方ないところ




本陣に次ぐサブ会場の「廉塾」ではガイドからの詳しい案内を受ける


 本陣、付近の山陽道沿いと並んで、江戸時代を代表する私塾であった「廉塾」でも、郷土料理が振舞われたり、専用ガイドによる案内などが行われていた。
 この廉塾は国重要史跡に指定されているのだが、こちらも保存状態はよろしくない。本陣とともに、象徴する建物を修復し常時公開できるようになれば、訪れる人も増えこの町の貴重さの理解にもつながることは間違いないところだが。
 
両会場間は少し距離があり静かな佇まいも味わえる



※取材日:2015年10月18日

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