南伊豆の海鼠壁・鏝絵(2)


 伊豆半島南部では海鼠壁を壁面一杯に施した独特の家屋が多く見られる一方で、松崎町を中心に繊細な鏝の細工物も残っている。それらの多くは松崎に生まれた入江長八の作品である。

 入江長八は文化12(1815)年松崎の貧しい農家の長男として生まれた。生来の手先の器用さに将来は腕をもって身を立てようと志し、12歳の時に同村の左官棟梁関仁助のもとに弟子入りし、19歳の時江戸へ出て喜多武清のもと絵画を学んだ。
 彫塑の技を修めてこれを左官の業に応用し、漆喰をもって絵を描き、或いは彫塑して華麗な色彩を施し、新基軸を開いてついに長八独特の芸術を完成した。
<伊豆の長八美術館パンフレットより引用>
 
ここでは長八の鏝絵を中心に紹介する。


海鼠壁の土蔵造りで営業されている旅館「山光荘」には多くの鏝絵が残る。袖壁部に見られる虎(左・中)。左右一対となっている。
(右)上を見上げると竜の鏝絵がある。上を向いて辛うじて撮影したが、どうやってここに鏝絵を施したのだろう。


松崎町を代表する商家建築 中瀬邸

土蔵の扉に鏝絵が施されていた



獅子の目玉に金物がはめられている 住宅地の中にある海鼠壁の土蔵 その妻部にも鏝絵が見られた

■岩科学校(M13/国重文)
洋風の要素を取り入れた明治期の代表的学校建築の一つ。

正面上部に見られる龍の鏝絵

内部には教室の他に床の間もある。その欄間に描かれた鶴の鏝絵。美濃和紙を口に含んで濡らしたあと、漆喰と混ぜ合わせて肉付けして造られたもので、代表作の一つとされる。一羽一羽形を変えて表現される。
※その他入江長八の作品は、「伊豆の長八美術館」に数多く収蔵されています。



最後にもう少しだけ海鼠壁のある町の点景を紹介します。

風化の具合が何ともいえない土蔵

下田の町並


海鼠壁製作中


下田の松本旅館


松崎の海鼠壁通り

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