金毘羅門前の郷愁風景

香川県琴平町【門前町】 地図 
 町並度 6 非俗化度 2  −坂道にも土産物屋や旅館の連なる参道の町並−

 
 金刀比羅宮(金毘羅さん)は現在も全国的にも著名な神社であり、参拝する客も絶えないが、かつては現在の比ではないほど参拝熱が高く、四国と瀬戸内地域にあっては、中央に向う交通路の他は琴平を中心に街道及び航路が巡っていたといっても、強ち過言ではない状況だった。江戸期頃の文献からは、琴平と宮島、そして吉備津(宮内)が参拝の旅の典型で、かつ豪遊ルートであったことがわかる。金刀比羅宮は海の神様であり、境内には海や船に関わる絵馬が展示された絵馬堂などもあり、瀬戸内の古い港町に行くと金刀比羅神社などが多数目に出来るのも肯ける。
 四国各地の陸路、そして多度津などに発着する船での参拝者が全て結集したこの町かつての賑わいは、誠に想像を絶するものであっただろう。伊勢参りと並んで金刀比羅宮に参ることは人生の一大イベントとも言うべきもので、江戸期に入ると江戸や大阪からの参詣者も増え、その賑わいに乗って慶長年間には他国から門前に移住する者もおり、歌舞伎の興行など求心力もたかまった。
 当然のことながら遊女も存在した。町は早期から遊女禁止の触を出していたにも関わらず、大型の宿屋も多く存在したことから後には半ば公然となり、酌取女を置く宿を茶屋、置かない宿を旅籠として区別していた。
 現在、町を流れる金倉川付近から本格的な参道らしい、賑やかな道が始まっている。旅館建築や、土産物屋、金刀比羅宮の神酒も醸造している金陵酒造も堂々たる母屋を参詣路に面して見せている。
 参道名物である長く急な石段に至る途中の坂道にも、両側に連なるのは伝統的な構えだ。昔ながらの旅館も現役である。石畳は光っており、これまでどれだけ多くの参拝客がこの上を往来していったのだろうと思わせる。
 以前初詣時期に訪ねた時はごった返した写真しか撮影できなかったので、今回改めて早朝に訪ね直したものである。しかし店が開いていない姿も本来のものではないようで、なかなか両立は難しいものである。
 




坂道下の町並 一番下は金陵酒造












訪問日:2004.01.02
2017.08.14再取材
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