街の風景

−集合住宅−

             

「京橋会館」は広島駅から歩いて5分程度の一等地に建つ市営のアパートである。いやアパートというより集合住宅といったほうが的を得ていよう。竣工は昭和29年、角地に位置し、街路に面して住宅等を配しその形は平面的には「ロ」の字型を呈している。中央には中庭のようなプライベートスペースが生れている。当時としては非常に斬新な造りだったに違いない。
 




通りに面して目一杯住宅棟を配している 逆台形のような平面形状をしている


 築50年を超えさすがに老朽化が激しく、建替えの話が出ており近年新規入居の募集が中止された。しかし最近になって、買収先との話が行き詰ったとか何とかで、当面この集合住宅は住民を抱えたまま生き長らえることとなったようだ。しかし見るからに痛みの目立つ建物、今後さらなる経年や地震時などには危険になることも予想される。
 欧州をはじめ諸外国では中央にコミュニティー・スペースを配したこのような形状の集合住宅は標準的ともいえるのだが、我国では極めて珍しい。戦後ともいえる時期にこのような建物を設計した当時の技術者は非常に斬新な着眼点を持っていたとも言え、それが今まで生き長らえてきた一因と言えなくも無い。
 まだ残る生活の風景をはじめ、郷愁の風景がそこには展開していた。





















2007年5月・2008年4月撮影

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