宮津の郷愁風景

京都府宮津市<港町・城下町> 地図
 町並度 6 非俗化度 7 −天橋立の陰に古い町並−
 




白柏の町並 河原の町並




 万町の今林家 重文・三上家


 宮津市は有名な天橋立が対句のような町で、そのイメージが先行しがちであるが旧市街には古い町並がある。
 中世より城も築かれ、17世紀頃に京極氏が宮津に入った頃に城下町が形成されたという。入海に位置することから良津とされ、商業も発達していった。丹後宮津の名は港町として各国に知られ、丹後一円で盛んであった縮緬産業などの地場産業も栄えた。縞の財布が空になるとは宮津の俚言で、民謡にもうたわれ、北前船などの商船が寄港した折には船員が遊郭などで散財したことによるという。その名残を留める一角が海岸に近い新浜地区にあり、現在も所々にそれらしき外見の建物が見られ、何となく華美な雰囲気が残照として残っているような、独特の風情が味わえる。
 市街地の地図を見ると街路の形に面白い特徴が見られる。かつての海岸線に平行させたのか扇形に道筋が展開している。それに交わる縦軸の路地は要こそ作らないが、碁盤目状に交わり海岸に近くなるに従いその目が狭くなっている。城下町時代に計画されたものだろうが、面白い区割である。そのため曲線の道を歩くごとに家並が視界に開けてきて、楽しくも見応えを感じることができる。
 そうした一角に国重文に指定された三上家住宅が公開されている。妻入りの厳かな主屋をはじめ豪華で細やかなこだわりを持った座敷、奥には見事な庭園もある。当家は江戸時代に廻船業で富を築いた旧家で、酒造業も営み、後には宮津藩の財政にも深く関与する家柄にあった。幕府巡見使の本陣としても利用され、専用の門なども見事に残っている。
 




新浜の町並


 他にも登録文化財となっている糸問屋を営んでいた今林家、江戸期創業の袋屋醤油店、赤い煉瓦煙突が印象的な造り酒屋、平入りの伝統的な町家の残る界隈と、港町・商業町として繁栄した姿が濃厚に残っている。
 小さな町ではあるが、古い町並という視点で見ると一つの町として完成されたものを感じる。天橋立を観光する際は、この宮津の市街地も散策することをお勧めしたい。


魚屋の町並
          
 ※全て2016.11再訪時の画像

訪問日:2004.08.13
2016.11.12・13再取材
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