門司港の郷愁風景

北九州市門司区<港町> 地図
 町並度 5 非俗化度 0 −貿易の最前線であった港町−


門司港は九州における鉄道の基点であったところである 門司港駅(左)旧九州鉄道本社(右)


 北九州市は大正から戦後にかけて門司市・小倉市・戸畑市・八幡市・若松市が徐々に合併して発展した都市で、現在でもそれぞれの個性を幾分か保ちながら工業都市・商業都市としての地位をゆるぎないものにしている。近年では小倉地区が市の中心として発展するに反し、門司地区はややうらぶれた雰囲気が強い。
 門司駅は12両も停車できるような長く幅の広いホームに、重厚とした鉄骨屋根が掛けられているが、それに比べ列車を待つ人の姿は少なく、構えが大都市の主要駅のようであるだけに哀愁感を感じさせる構内である。関門トンネルの開通後はここが九州の表玄関であるのだが、今では優等列車もなく、ローカル列車と貨物列車ばかりである。
 一方で隣駅の鹿児島本線起点・門司港駅はかつて関門連絡船の乗換駅であり、現在でも駅舎に近い部分に連絡通路の跡が残る。駅舎は1914年建築の洋風建築で、国指定重要文化財である。外観にとどまらず切符売場、便所に至るまで当時のままで、貴重な建造物としての価値も高い。また近年になって洋風建築群と港湾の風景が着目され、観光客の訪れが激増した。新たな風が吹き込まれている地区でもある。
 ここは明治時代より貿易港として、大陸への門戸としての顔であった。西日本隋一の港として人や物資の発着が絶えず、また大陸への植民地の玄関ともなった。門司港駅をはじめ、税関の建物、旧三井倶楽部などの財閥系洋風建築、旧大阪商船などの重要港の面影を残す建物など、洋風建築・伝統建築が残り、独特の町並景観を形成している。




旧門司三井倶楽部 この建物は山手にあったものを門司港駅近くに移築したものである 旧大阪商船とならび町並的に連続している


 また賑わいを背景に、周囲の平地から山裾にかけて邸宅群が形成され、また遊里などの施設も発達した。但し、これらの名残は再開発によりごく一部にその片鱗が見られるに過ぎない。
 観光資源として新たな活気が生まれ、それが伝統的な景観に活力を与えているのは評価できる。しかし一方で、町の歴史を感じさせるものはこれら博物館的に保存されるものだけに限定されてしまうのは、時代の流れとはいえさびしいものである。
第一船溜に接する風景 手前は旧門司税関




錦町にわずかに残る旧繁華街の面影 幹線道路に面して伝統的な造り酒屋も残る


全て2011.10再取材時撮影


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訪問日:2002.03.03
(2011.10.09再取材)
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