馬路の郷愁風景

  島根県仁摩町<港町・産業町> 地図 <大田市>
 町並度 5 非俗化度 8  −大森の銀の積出港として繁栄を極めた 後に左官業の町としても発達−









海岸に沿う一本道に沿い展開する馬路の町並


 仁摩町は島根県石見地方の東端、大田市の西にある。郡名は邇摩郡、駅や港は仁万と表記される。
 かつて大森が銀山景気に湧いていた頃、この周辺の港町はその積出しで賑っていた。特に馬路浦が代表的で、博多方面に得意先を得て銀鉱石を買付ける緒船の出入りが絶えなかった。未曾有の繁栄を来たしたという。
 江戸時代は石見銀山領で、幕府の直轄地であった。現仁摩町に属する諸村は、銀山の運営に必要な木材などの供出が義務付けられ、また一部の村では、大森代官所の添村として火災などの非常時の防衛を担当していた。仁万に船表御番所が置かれて、その運営費や建替えなどの費用も沿岸部の諸浦が負担していた。
 産業としては漁業と林業があったがいずれも零細なもので、銀山の恩恵に頼る部分が大きかったものと思われる。
 馬路地区は、海岸に沿う一本道に細長く家並が続く。海沿いで潮風がきつい為か粗末な板張りが多いものの、伝統的な町家建築も所々に残り、古い町の佇まいだ。
 銀の輸送が陸上に移った江戸末期からは左官業などの出稼ぎ職人による送金で、それでも結構潤っていたと聞く。地方の一寒村という雰囲気でありながら、端正な格子が残されている姿などにその名残を感じることができる。川に沿う辺りには広い敷地を持つ邸宅も見られる。左官業で潤った名残だろうか。
 集落の眼前に広がる日本海岸は琴ヶ浜と呼ばれ、数少ない鳴き砂の浜として知られている。綺麗な砂を象徴する鳴き砂の浜を、背後の集落とともに保持していってほしいものだ。
 




琴ヶ浜海岸

2023..04再訪問時撮影      旧ページ(仁摩の郷愁風景)
※文章は一部「馬路の郷愁風景」と共通

訪問日:2005.03.21
2023.04.30再訪問
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