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| 玉島三丁目の町並 | |
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| 玉島三丁目の商店街 | |
倉敷市域の南西にある玉島地区。近世初頭の玉島（当時の乙島）は、備中の港の中では笠岡港とともに西国航路筋の寄港地であった。当時は名の通り本土とは離れた瀬戸内に浮ぶ島で、高梁川の河口にもあたっていたこともあり備中国の産物は高瀬舟によりこの玉島に集結された。その後相次ぐ新田開発により、今では完全に陸封された町となっている。 玉島港では他藩との交易の中で、乙島の商人が営利追及の為に特権的・排他的な問屋稼ぎの形をとった。「玉島港問屋株定書」という条例に見られるこの規約は、当初周辺の柏島村、長尾村などにこの特権を侵させることも多かったため、当地の港庄屋が松山藩に申しいれ、それを受けて藩は現地に赴き厳重に注意、諸規を設けたのである。当時の玉島港は、入港するには乙島瀬戸という細い瀬戸を通過せねばならず、この規律は事実上乙島以外の商人に船と直接取引きさせるのを厳禁させた法令であった。町内住民であっても問屋手形を持たぬ物には商取引は行わせず、日用品等も問屋を通すことがうたわれた徹底したものであった。 このような藩の保護にもより、玉島は商港として繁栄を続けて行ったが、高梁川と港を直結する水路が建設されてから一層の発展をみる。現在の船穂町より約9kmに及ぶこの水路は高瀬船も往来できたことから高瀬切通しと呼ばれ、同時に港の周囲には新田が次々と開かれた。特に1676年開作された阿賀崎新田は、延長391mの一定の町割に庄屋菊池重右衛門が強力に問屋を誘致し、現在でもその名残が見られる。 しかし玉島の栄華に満ちた時代はそれほど長くなく、18世紀に入ると港への土砂の堆積が著しくなり、大型の廻船は入ってこられなくなった。これは高梁川上流での製鉄業（砂鉄採取による土砂の切り崩し）による高梁川への土砂流入のためである。また、主要な輸出物であった繰綿の質が低下したことや、綿花の副産物である油が、幕府の油物規制により自由に取引できなくなったこと、周囲の新しい港町の台頭などが要因である。それでも明治前半頃までは細々と営業されていたようであるが、今では人通りも少ない静かな家並を見せている。 ここでは玉島旧市街の東側、玉島二・三丁目付近を紹介する。この地区の中心に商店街があり、以前より幾分風情は淡くなったが古い商家建築そのままに営業されている店舗、昭和的な風情が色濃く定期的に催し物も行われているようだ。その周囲にも面的に古い町並が残っており虫籠窓を持つ旧家などが見られ、広範囲に商店が集い賑わっていた地区だったに違いない。少し小路に入ると塀が連なった落着きのある路地も見られた。 三丁目界隈では松山藩主に仕え庄屋職をつとめた旧柚木家の建物が残り、座敷・中庭を無料で見学することができる。母屋は江戸中期に建てられたとのことで、公開された建物の少ない玉島地区にあっては貴重な遺構だ。 |
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| 旧柚木家住宅（公開） | |