脇町の郷愁風景

徳島県脇町<商業都市> 地図 <美馬市>
 
町並度 8 非俗化度 2  −袖卯建の連なる藍商の町−

 徳島県の北部、吉野川の北側にある脇町。脇といえば卯建(うだつ)の町として有名な町並である。実際その中心となる南町の家並は各家の軒のラインが一致しているので整然とした卯建の連続性があり、印象的な町並景観となっている。
南町の町並 軒のラインが一致しており連続性の高い町並風景が見られる








 
 卯建は商売繁盛のシンボルともいえる。当所に見られるものは袖卯建
(注)という型で妻部に厚さ30〜50cmの漆喰に塗られた壁を突出し、本瓦を葺いている。重要伝統的建造物群保存地区内の南町の400mほどの一本道は、この卯建造りが集中して見られ、視線の主役を占める。卯建はもともと隣家からの延焼を防ぐ役割の袖壁が、装飾の意味を持ったもので、主に東海以西の地方で目にすることができる。「卯建があがらぬ」とは商売に成功しないと卯建を構えることが出来なかったことに由来する言葉である。
 阿波一円で盛んだった藍商の中心としてのこの町の歴史は16世紀に遡る。現在は少し遠ざかっているが、かつて通りの裏手に吉野川が流れ、川運で積込み搬出されていた。その名残は、町並の中心の吉田家住宅の裏手に残る、船着場として使われていた石垣に見出すことができる。
 現存する町並の規模としてはそれほど大きなものではないが、新しい建物がほとんど混ざらない南町界隈の家並は古い町並として濃密であり、連続した町並景観としての価値は高い。また、この古い町並を生かしながら如何に後世に伝えて行くか、その取組みへの熱心さが、この町並からは強く感じられる。先の吉田家住宅では、古い屋敷の遺構の公開に留まらず、虫籠窓からの採光を使った休憩室、町並保存への問題点の提示、古い土蔵をギャラリーとして開放したりと、景観を壊すことなく情報センター的役割を果たしている。
 


(注)卯建にはこの袖卯建の他に屋根の両端部を一段持ち上げ、軒先まで連続して張出させた「本卯建」があります。本卯建の町並は岐阜県美濃市が代表的です。美濃の郷愁風景 で両者をちょっと比較してみてください。






後半2枚:2002年4月撮影
その他:2010年9月撮影
訪問日:2002.04.29
2010.09.19再取材
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