八木の郷愁風景

奈良県橿原市<商業町・街道集落> 地図 
 町並度 7 非俗化度 6  −東西南北二本の古い街道の交わる辻を中心に発達した町−





八木町三丁目の町並(伊勢街道沿い)

 橿原市八木地区は街道上に栄えた市場町、商人町である。町の中心を南北に走る中街道、そして東西に横切る伊勢街道の交わるところで、伊勢参りの客も数多く往来したところだ。


八木町三丁目の町並(伊勢街道沿い)




北八木町二丁目の町並(中街道沿い) 伊勢街道と中街道の交差点 右は平田家(公開)




八木三丁目の町並(中街道沿い)
 

 中世から市が開かれ、商業、流通に携る座が置かれた。江戸期には酒造業、綿打職、荒物屋、繊維商、薬商、月代(今の理髪店)など非常に多岐にわたる職種が、この界隈にひしめき営業されていた。また旅籠も設けられ宿場的な機能もあったと言われている。
 古い町並はかつて高札のあったことをうかがわせる「札の辻」という両街道の交点を中心として、北は近鉄の踏切辺りから南はJR桜井線を跨いだ辺りまで続き、東側の伊勢街道沿いにも旧家がある程度まとまって残っている。
 南西に歩いて10分ほどの位置に保存地区の今井町がある。当時の大商業都市今井を控えた門前町的な役割があったのか、建物の造りは今井の共通点を感じる。その陰に隠れていることで注目されることもなく状態を保ってきたのではないかとも思える。しかし、近鉄の主要駅である大和八木駅の東に接すると言ってもよい位置にあり、周囲には近代的な商業地や住宅地がが展開していることから、よくぞその波に飲み込まれなかったといえるだろう。それは住民の古い家屋・町並に対する高い意識がの成果なのかもしれない。
 前回訪ねた時はそれこそ全くそのままの町並だったが、再訪時には札の辻にある平田家が改修され公開されていた。中街道を挟んだ西側も平田家の建物であるため東の平田家と呼ばれる建物は18世紀後半の建造ともいわれ、旅籠を営んでいたという。宿泊に宛がわれていた2階の座敷には見応えのある欄間や外廊下の木製欄干なども残され、見る価値のある建物だ。
 奈良県では多くの文化財が存在しそちらが注目され易いからか、かなりの質と量を残す古い町並が、注目度も低く自然体で残っている例が多く見られるが、この八木もその一つといえよう。


訪問日:2002.10.14
2016.09.11再取材
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※2016年9月再訪時の画像

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