筑後福島の郷愁風景

福岡県八女市<商業都市> 地図
 
町並度 8 非俗化度 4  −城下町を基盤に地場産業が発達−

 八女市は良質の茶の産地として知られ、何県に属しているかわからなくても名前だけは知っているという人が多いだろう。
 筑後平野南東部に位置するこの地は、一時福島城が築城された。城自体は一国一城令により廃棄され、城下町時代はわずかであったが、既にその頃から町の基盤が形成されていたという。町人地として整備されていた地区は福島町と称され、後に筑後でも屈指の商業町となった。






 地場産業も盛んに起こり、特に和紙や提灯など手工業が発達した。その要因は、石や木材などの素材に恵まれていたことや、農家が豊かでこうした副業への投資が容易だったことが挙げられる。今でも提灯・灯篭・仏壇・石工品・雛人形など各種の店が多数見られ、それらを眺めているだけで楽しい散策となる。しかもその多くはどっしりとした妻入りで、側面に錣(しころ)庇を従えた古い姿を継承している。
 この町は伝統工芸を生かした祭がまた多い。秋分の日前後に行われる福島八幡宮の灯篭人形は、山鹿の大宮神社から奉納燈籠をもらい受け、江戸時代半ばに福島町民が独自の工夫をして人形の燈籠を奉納したのが始まりだといわれている。また3月一月にわたって繰り広げられるぼんぼり祭では、雛人形のふるさとと銘打つ町らしく、あちこちの町家に人形が飾られる。私が最初に訪ねた時は灯篭人形の日にあたっており、貴重なからくり人形芝居を見ることが出来た。町は雑踏していたが普段公開されていない町家の内部も特別に拝見できる。
 重要伝統的建造物群保存地区にも指定されており、最近になって伝統的な建物の修繕が行われ整った佇まいが展開する箇所もある。とはいえ素材は改変されずその良さが逆に引き出され、また土産物屋など観光客向けの店舗もない。散策客もちらほら見られる程度で、町の素顔に近い良い状態で保存されているという印象だ。




左は町並で最も建築年の古い今里家(屋号房屋) 天保9(1838)築





訪問日:2001.09.24
2016.07.18最終取材
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