横尾の郷愁風景

広島県福山市<街道集落> 地図 
 町並度 4 非俗化度 8  −山陽道と福山城下への街道の分岐点に栄えた町−
 


 


 
横尾の町並 


 


 福山市街地の北外れ、芦田川の支流高屋川に沿い横尾の町がある。ここは山陽道に接し、福山城下へ向う街道、そして山陰に向う石州街道との分岐点にあたっていた。今も高屋川を渡る鶴ヶ橋のたもとの福塩線踏切付近に出雲大社と刻まれた道標が残っていることがそれを証明している。いわば旧街道が巴に交わる地であり人々の往来が重なり賑やかな所であった。 
   


 


 
裏路地の風景 


 高屋川は大きな流れではないが当時は橋がなく、現在の鶴ヶ橋のやや東に渡し場があった。京方に向かい渡った先で街道は東西に分かれ、右に進路を取ると城下へ向う。町場は主にこの先に開け、商家が建ち並んでいた。
 「行程記」には、「ココヨリ福山城下マデ一里半」と記す。往時は旅人や用務客などを相手に商店が連続していた。横尾飴という銘産物もあった。当時の町の雰囲気は、当時からこの街道の幅が現在の道路事情に堪えうる広さであったことからそのまま残り、古い町並として自動的に保存された。切妻平入で2階正面部の虫籠窓や海鼠壁などといった備後地方らしい家並が約300mにわたってある程度連続している。
 今回ある情報を得て再訪してみると、空地となっている部分が目につき、町並の雰囲気が随分変わっていた。実際は一部の建物が失われただけだろうが、全体の印象に与える影響は大きい。商店も多くが役割を終えたうえに、車道幅一杯に多くの車両が往来するため生活するには苦労が伴うことだろう。この家並が形成された頃に比べ、交通事情はかなり様変わりしたことだろうが、寂しさはぬぐえない感がある。
 やがては町並から往時を偲ぶことは不可能になるかもしれないが、その日は少しでも後になることを願いたい。



 


 
   
   
2021.07再訪問時撮影     旧ページ

訪問日:2004.11.03
2021.07.14再訪問
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