第14号 (16.10.26発行)

天領上下白壁まつり
    
関連ページ 上下の郷愁風景


上下の町並(上下教会のドームより撮影)


 上下の町並は、山陽山陰を結ぶ街道沿いの要衝だった。さらにこの街道は、石見の銀を輸送する重要な役割を持っていたため、上下は天領として幕府の支配下に置かれ、代官所以下政治的機関が置かれていた。
 この町並を舞台に、10月16日に今年で23回目の開催となる「天領上下白壁まつり」が開催された。このイベントは毎年開催されていることは知っていたものの、なかなか足を向けることが出来ず今回初めて開催日に訪ねることができた。
 
 




 




古い町並の連なる旧街道沿いには地元の名産などの即売店、また旧家がの特別公開などもあって地元の小中学生などが案内を行う姿もあった。





駐車場や店舗前のスペースで行われたミニライブ
 
 恒例の時代行列は、地元商工会の会員や高校生ら約20人が参加して約500メートルをパレード。明治の文豪・田山花袋や田山の代表作「蒲団(ふとん)」のヒロインのモデルで地元出身の文学者・岡田美知代らに扮(ふん)して練り歩いた。オープニングセレモニーでは、上下北小の3〜6年生12人が地元の伝統芸能・翁陣(おきなじん)太鼓を熱演。上下保育所の年長組29人はよさこい踊りをかわいらしく披露した。
(出典:山陽新聞デジタル

 また、所々にステージが設けられ、地元の学校の吹奏楽部やアマチュア歌手などが日頃の練習成果を披露していた。また地元の名産品や府中焼きといったいわゆるB級グルメなども即売された。






 この祭開催に合わせ私が期待していたのが普段内部を見ることの出来ない建物が開放されるであろうことだ。大正時代建築の芝居小屋・翁座の公開情報は事前に確認しており、今回訪ねたのはこの情報を得たことが大きいが、その他にも当日思わぬ形で見ることの出来た建物がある。
 一つは古い町並の一角にある「片野製パン所」だ。洋風建築の外観で、以前から気になっていたものの常に無人の様子なので、これは取壊されても不思議でないものと思っていた。しかし今日は扉が開き、入口の前にはパンが並べられているではないか。
 内部は外観からもわかるように奥行が極めて浅く1.5mほどしかない極端さだ。しかし案内をされている女性(恐らくこの店の奥様)によると、かつてはパン屋とともに食堂も経営されていたとのことで、その当時の名残もあった。さらに驚くべきことに隠し階段のような狭い階段を登り2階に上ると、何とも滑稽かつ風流で端正な和室があった。
 
洋風の構えを見せる「片野製パン所」 祭に合わせて内部が開放され、貴重な姿を見ることが出来た。




ドームが印象的な「上下教会」 基本商家風建築なので裏庭から見るとドームが異質に映る。

 町並の中央に威容を放つ「上下教会」。教会ながら商家風・土蔵風の建物なのだが、屋根に突き出たドームが非常に印象的だ。
歩いているとなにやらドーム内に人影が・・、ということで私も早速駆けつけて貴重な俯瞰風景を眼にすることが出来た(1枚目の画像)。ドーム部分は今年改修され、今回のイベントに合わせて特別に希望者のみ登らせるということだったらしい。これまたとても貴重な体験をさせて貰った。見事な裏庭も始めて足を踏み入れることが出来た。


 今回イベントに行ってみようかと思った直接のきっかけはこの「翁座」の公開だった。随分前に1度入ったことはあったのだが、それ以後訪ねるたびに閉っていて、15年ぶりくらいに内部を見学できた。消防法の基準が厳しく、なかなか開放できなかったとのこと。
 嬉しいことに随時地元の方がガイドをされている。それを聞きながら、知らなかった多くのことを学ぶことが出来た。
 
 (→詳しくは、『路地裏』のこちらで )

 古い町並を訪ねようとして、このようなイベントが行われているのは日常的な町並風景を鑑賞しようとしている私には基本的に迷惑なことなのだが、何度も訪ねている地元に近いところであれば、このように新たな発見の連続となることも少なくない。そのようなことで、私は近場の町であれば積極的にこのようなイベントにも足を向けたいと思っている。

 




翁座。大正時代に芝居小屋として開場、以後映画館などとして使われた貴重な建物。地元の方が熱心に入場者に案内されていた。


※取材日:2016年10月16日

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